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 オーストラリア北西部キンバリー高原のパブで、赤ら顔のおっちゃんに声をかけられた。

 強いオージー訛りでおっちゃん曰く。

「あのな~、このあたりにゃ、水溜りに一メートルを超す魚がいるんだぜ。日本にはそんなデケーのいるか…」と。

 いるかと言われても、日本の水溜まりでみかけるのはアメンボウかカエルの卵くらい。

 そもそも「釣りの話をする時は両手を縛っておけ」などと言われるほど。しかも、かなりの酔っぱらい。話半分どころか、期待する方が無駄。なのに、ついつい大ボラと分かっていながら真に受けてしまうのが釣り人の悲しい性。

 かくして、ビールとワインを箱ごと積み込んだ四輪駆動車に乗り込み、乾燥しきったサバンナを彷徨うこととなった。

 おっちゃんの本職は、野生化して賞金首になったラクダやロバ、そして増え過ぎたカンガルーを捕まえるワイルドハンター。

 背丈ほどもあるアリ塚をなぎ倒し、ビヤ樽のようなバオバブの木を迂回し、道無き道を這うように走り続けること丸二日。ついに巨大魚の潜む水溜まりに到着した。

 いやはや、水溜まりといっても規模が違う。雨期にはサバンナを覆い尽くしていた大河が、乾期になって水が涸れただけ。その広さは東京ドームの一〇倍は優に超し、岸辺では巨大なクロコダイルが寝そべっている。

 とりあえず、バッタをイミテーションした毛バリを放りこむ。すると、どこからともなく鉄砲魚が湧いてきて毛バリに水鉄砲をピュー!

 その奇妙な行動に見とれていると、横から巨大なバラマンディが現れて、鉄砲魚をパクッ!

 それを見ていた、おっちゃん曰く。「俺はよ~、鉄砲魚がオウムを撃ち落とすのを見たことあるぜ!」と。ま、信じたい気はするけれど……。