イキトス(ペルーアマゾン)
Aquitos
 
 
アマゾンのジャングルを「緑の魔界」と人はいう
だがジャングルに魔物などいない
ヒトという残虐で狡猾で強欲で愚かな獣が棲んでいるだけだ
People said, "Green Devil World"
But Amazon has no devil.Only tyrannicaly,tricky,
avariciously beasts live there. It's human.
Home     Profile     Diary     Fishing     Gallery     Link
 
 
 
 
当サイトに掲載されている写真・文章等の無断使用は禁止します。
Copyright C 1996 ZAMMA MASAYUKI All rights reserved.
 「ダメダメ、もっと思いっきり水面を叩いて」
 アマゾンでのフライフィッシングは竿先で水面を叩くことから始まった。
 世界各地を駆け回っていると驚かされることが間々ある。だが、それでも相手はあくまでも魚。足音を忍ばせ、姿を潜めてポイントに近づくのは万国共通、常識である。それなのに、アマゾン、それも地平線のかなたまで大地が水浸しになる雨期には、釣りの常識なんてまるで通用しない。
 ここはアマゾン河口部のベレンから約3600キロ上流に位置するペルーのイキトス近郊。地図を見てもらえば分かるが、河口部の川幅が約320キロ、全長が約6300キロ、流域面積705万平方キロのとてつもない大河アマゾンの中流部、マラニョン川とウカヤリ川、そしてナポ川の分岐点に位置する。なんと、日本を北から南まで縦断した距離に匹敵するほど上流なのに海抜はたったの100メートルほどしかない。
 ペルーの首都リマを飛び立った飛行機がアンデスの白い嶺を越えると、即座に熱帯雨林の濃厚な緑が視界に飛び込んでくる。雨期のせいか、低い雲が何層にも密林の上空を覆い、紅茶色やコーヒー色やミルク色のアマゾン支流が網細血管のように広がっている。まるで視界に広がる密林全体が地表を覆い尽くして鼓動する巨大な生き物のようだ。
 だが、いったん地上に降り立ちボートに乗って川面に漕ぎだすと、目に飛び込む風景は一変する。ミルク・ティー色のアマゾン川がちっぽけな人間の営みをあざ笑うかのように流れ、森の奥深くまで触手を伸ばす。森を支配しているのはアマゾン川であることを誇示するように。 
    *       *
 ペルーでの遺跡発掘調査を終えたボクは、イキトス市内の旅行社で二泊三日ジャングル・フィッシング・ツアーを予約し、タックルとカメラを担いでボートに乗り込んだ。
 港を出たボートは流木や小島のような倒木の固まりを避けつつアマゾン本流を横断し、岸辺にぽつねんと建つスタンド兼駄菓子屋で燃料と鶏の皮付き肉を買い込み、下流に向かってエンジン全開。日本の屋形船に似た水上乗合船、炎天下で釣り糸を垂れるカヌーの漁師、喫水線ぎりぎりまで果物やカゴを満載した荷物運搬カヌー……。アマゾンのこの周辺では町を一歩離れると水上が唯一の移動手段。交通量が多い。
 約2時間ほど岸沿いに走った後、ミルク・ティー色の本流に別れを告げ、コーヒー色のヤナヤコ川に舳先を向ける。川幅は20メートルほどで、流れはまるで感じられない。周囲は熱帯雨林特有のひょろひょろと背ばかりがやたらと高い木々が枝葉を広げ、エスカレタデモナ(猿の梯子)と呼ばれる蔦植物が幾本もぶら下がっている。
 余談になるが、アマゾンの植物達は生存競争が激しいようだ。なにせ、寄生植物の多さもさることながら、幹や葉を刺で武装しているものや有毒な根や実を持っている植物も少なくない。インディオの主食であるマンジョーカも有毒なので水に晒してからでなければ食べられないし、カシューナッツも生で食べると口がしびれて話もできなくなってしまう。
 さて、ヤナヤコ川を遡ること30分ほどで、今回のベースとなるシンチクイ・ロッジに到着した。このロッジはジャングル探検を体験したいという物好きや昆虫採集家、バード・ウオッチャー、ナチュラリスト、お忍びカップル、アングラーなどが利用するロッジで、電気もなければ、水道も風呂もなしの、まんまサバイバル・ロッジ。川岸の森の一角を切り開き、高床式の椰子の葉葺きの小屋を数軒建てただけ。陸路は一切なく、どこに行くにもカヌーだけが唯一の足だ。
 ガイドは生まれも育ちもアマゾンの密林というクレーバ。ちょっと太り気味だが身のこなしは素早く、陽気な28歳独身。「釣れなかったら、夕食はバナナとコーラだけだよ」とクレーバにプレッシャーをかけられつつボートに乗り込む……
◀Fishing Top