フライ川(PNG)Fry River


ニューギニア島の中央部を流れるフライ川

トイレ無し、電気無し、水道も無し!

バラマンディが飛んだ! ターポンが舞った!

パプアンバスが潜った!

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突然、「こら~!ここはわしらの縄張りじゃ!」と怒鳴り声。振り返れば、弓矢を構えた半裸の男。

 ここはパプアニューギニア南西部フライ川流域の大湿原。なにせ、言葉の違う部族が数百あり、無断で縄張りを越えると侵略者と見なされ、襲われても文句を言えない。とはいえ境界線がある訳じゃなし、釣りに夢中になり、たまたま越えただけ。だが、言い訳するにも言葉が通じない。

 とりあえず、その日一番の大物を献上し、ついでに、「今夜、泊めてもらえませんか?」と聞いてみた。

 いつもボクの旅はいい加減で、行き当たりバッタリ。そもそも、明日のことを深刻に考えるようじゃ、辺境地の釣り人には向いていない。

 かくして、ガス、水道、電気なし。軒下を豚や鶏が駆け回る高床式の家に居候することとなり、夕食のおかず釣りを仰せつかった。

 釣り方は実に簡単。まずはミミズで小魚を釣り、その小魚をエサにして大物を狙う。竿もリールも必要なし。仕掛けを足下に放り込めば、子供の背丈ほどのサラトガ(アロワナ)やナマズが簡単に釣れてしまうのだ。

 ……別れを翌日に迎えたその夜。集落の皆が広場に集まり、伝統的踊りシンシンを披露してくれた。

 極楽鳥の羽根で着飾った男が太鼓を叩き、上半身裸の女性たちが虚ろにステップを踏む。

 踊りも佳境に入ったそのときだった。族長が娘を指差し、「嫁にどうだ」とポツリ。

 う~ん、「このまま婿殿に納まって、釣り三昧も悪くないな~」と思ったが、一応、ボクには成人を過ぎた娘が二人いる。「申し出はありがたいけれど……」と、丁重にお断り。

 すると、「一夫多妻制だから問題ない。結納金は野豚一頭でいいよ」と、さらに甘い誘惑。

 いやはや、旅はいつだって出逢いと別れの繰り返し……。