ヒョウタンから作ったペニスケースだけを身に付けた裸族。全身に泥を塗り、泥の仮面をかぶった“マッドメン”。皮膚にクロコダイルの紋様を彫り込んだ“クロコダイルメン”……。ドキュメンタリー番組や民族学に興味のある人なら直ぐに分かったと思う。「地球上に残された最後の秘境」と形容詞されるパプアニューギニアである。
南西太平洋に浮かぶニューギニア島。その東半分とニューブリテン島など大小約700の島々から構成されるのがパプアニューギニア。総面積は日本の1.25倍。大地のほとんどが熱帯降雨林に覆われ、海岸部の年間平均気温は30度以上。人口は約400万人。500以上の異なる部族が700以上の異なった言葉を話し、その昔ながらの暮らしは世界の文化遺産に指定したいほど。特に結婚式や収穫の祝いなどに催されるシンシンの祭りは、各部族独自の衣装と踊りのスタイルがあり、まるで太古の昔にタイムスリップしたようだ。
そんな中でも、今回訪れたスキ村は最も開発の遅れたウエスタン州フライ川河口部のデルタ地帯に浮かぶ小さな集落。
関西空港からニューギニア航空の直行便で7時間弱。深夜の首都ポートモレスビーに到着。今回のガイド、シンバさんの出迎えを受ける。赤銅色の肌に太鼓腹のシンバさんはスキ村生まれの釣りキチで、オーストラリアの大学で亀の学位を取得したインテリ。顔はゴツイが優しい笑顔とユーモアの持ち主だ。
翌朝、サウナ状態の待合い室で数時間待ったあげく、国内線の小型プロペラ機に乗り込む。スキ村まではダイレクトに飛べば2時間弱の距離だが、飛んでいる最中に「乗りたいお客がいるよ〜」と無線が入る度に進路変更。結局、小さな集落に立ち寄ること4回、計5時間以上かかってスキ村に到着。いつだって楽園は近くて遠いのである。
訪れたのは乾期の真っ最中。だが、飛行場のある小島の周りは水浸し。ここから先の移動手段は船外機付きの小型ボートか丸太をくり抜いたカヌーのみ。早速、ボートに乗り込んで睡蓮の密生した水路に漕ぎ出す。
15分ほどでシンバ一族の集落に到着。集落といってもヤシの葉葺きの高床住居が10棟ほど軒を連ねているだけの半分水没しかけた小島。電気、水道、ガス、電話など、文明の利器は皆無。当然ホテルなんて有るはずもなく、シンバさんの実家に居候することとなった。床が抜けそうな部屋には蚊帳が吊ってあるだけで、家財道具は一切なし。照明は石油ランプ、お風呂は川の水を汲んできたタライ、トイレは地面に穴を掘って椰子の葉で囲っただけ。ともかく、こんな奥地まで来た日本人アングラーは初めてとあって、村人の熱い視線を浴びながらタックルを紐解く。
午後4時。シンバさんの2人の母親(一夫多妻性なのだ)に、「釣れなきゃ夕食はバナナとタロイモだけだよ!」などとプレッシャーをかけられてボートに乗り込む。ボートは18フィートほどの和船で、船外機を操るのはスキ村の神父さん。顔は似ていないけれどシンバさんのお兄さんだ。
村人の熱い期待を背にスタートしたものの、燃料フィルターの調子が悪く、30秒間全開で走ったら1分間お休み、といった状態。それでも30分ほどで睡蓮の咲き乱れる沼地にポッカリと水面を覗かせたポイントに到着。ちょうど夕マズメ時とあって、あたり一面で小魚がパシャパシャ、大物がガボガボ! “楽園はこうでなくちゃ”なんて思いつつフローティングミノーをキャスト。チョンとアクションを加えた瞬間に水面が弾け、シルバーに輝く魚が宙に舞った! 2度3度と優雅なジャンプを繰り返して上がってきたのはフライフィッシャーの憧れパシフィックターポン。サイズは50センチほどだが、入れパク状態。初日からこれじゃ、明日以降はどうなることやら……
協力/ニューギニア航空・アングラーズリパブリック・A&Fカントリー