セピック川(PNG)Sepick River


98年秋にNHK(BS2)スペシャルに出演した。

タイトルは「世界釣り紀行」セピック川で幻のムーンフィッシュを釣る……

I played in NHK Special "World Fishing Travels" two years ago.
The target was moonfish.

 1997年5月18日。パプアニューギニアの大河セピックに生息する「月の魚」を求めて成田を飛び立った。NHK(BS2)スペシャル「世界釣り紀行」の出演者として。

 職業柄、釣り雑誌やTV番組の関係で有名なアングラーと仕事することも多い。ハッキリいって辛い。毎回、その体力と忍耐力と精神力に感心させられると同時に、根っから釣りが好きでなくちゃ、こんな仕事は勤まらないんだな、などと感心させられる。

 そんなわけで、釣りはあくまで趣味。取材される側には絶対になりたくない。それよりもアングラーにあれこれ勝手な注文を付けて雑誌を作っている方が気楽で楽しい、などと常日頃思っていた。ところがNHKのプロデューサーが突然ボクの事務所を訪ねてきて、出演を…と言い出した。当然、ボクは丁重にお断りした。「有名で釣りの腕も確かでカメラ写りのいいアングラーを紹介します」とも言った。だが、そのプロデューサーは言った。「この番組は釣れない方が視聴率が良いんですよ、下手な方が好都合なんです」と。たしかに「爆釣だ!」なんて番組はつまらない。釣れずに悩んでいるアングラーを見るのも一興である。だが、釣れないアングラーの一人としてボクが登場するとなると話が違う。

「どこでも行きたい場所をいってください。予算はなんとでもします」と、プロデューサーは美味しい餌をボクの前にぶら下げた。

 たしかに行きたいけれど予算的に行けない場所は多々ある。タンザニアのナイルパーチ、南アフリカのトラウト、東シベリア、フェゴ島……。そして民族写真家の端くれとしてはニューギニア高地人に会って、ついでにトラウトを釣ってみたいなんて思いもあった。

 そんな訳で「パプアニューギニアのアマゾンと呼ばれるセピック川を高地から河口まで旅をさせてくれるなら」などと言ってみた。どうせ予算も日程も限られ、断念するに決まってるはず、などと気軽な気持ちで。

 それから数日後、プロデューサーから電話があり、パプアの企画が通ったという。ただ単に釣りに行くのでは面白みがないので、幻の魚ムーンフィッシュを釣ってもらいたいという。

 パプアニューギニアには50キロを越すパプアンバスが生息していると聞いたことがある。だが、ムーンフィッシュなんて魚は初耳。セピック川は陸路から途絶した全長1100キロの未知なる大河。我々凡人の想像を超える魚がいても不思議はない。かくして、カメラマン、VE、現地コーディネータ兼通訳、そしてプロデューサーとボクは大河を旅することとなった……