オランダThe Netherland

オランダ北部のフリーズランド
そこは世界有数のパイク・パラダイスだ
ゴッホやレンブラントが釣りをしたとは思えないが
同じ光と影を感じたことだろう

Here is the most famous pike paradise.
Pike in the Netherlands are so bigger than other areas.

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 1497年にモスクワ郊外で体重142キロ、体長5メートルの巨大なパイクが捕獲され、ヒレには「ロシアの国王フリードリッヒ二世が1230年に放流した」と記されていたそうだ。ま、古い記録なので信憑性は怪しいが、なんと264年も生きていたことになる。

 さて、オランダの北部フリーズランドを旅していたときのこと。

宿泊先の安宿で、色褪せた一枚の写真が目についた。無精髭の男が背丈ほどの魚を抱えて微笑んでいる。

 ガラスの埃を払い、よく見ると口がワニのように裂けた凶暴な顔つきのパイクで、持っているのは若き日の宿の主人だった。

 主人が言うには、「一昔前まで、運河には鴨をひと呑みにするようなパイクが沢山いた」らしい。

 残念ながら、熱中しすぎた多くの釣りびとの例に漏れず、カミサンに、「あたしとあのグロテスクな魚、どっちをとるの!?」と迫られ、ここ10年、釣り道具は封印したままだという。

 がしかし、「恋は一瞬、釣りは一生」なんてことわざもある。一度釣りに魅入られると、カミサンの一言だけできれいさっぱり辞められるもんじゃない。

 かくして、倉庫で埃をかぶっていたボートやタックルを引っ張り出し、カミサンの冷たい視線に見送られながら運河に漕ぎ出した。

 「カミサンには一目惚れでね~。あんときゃ、釣りを辞めても悔いはないと思ったよ。若気のいたりだとは知らずにね……」なんて主人の愚痴を聞きつつ3時間。突如、20センチほどのフナをエサにしたウキが消えた。

 のらりくらりと逃げ回ったあげく、浮いてきたのは30キロほどのパイク。ロシアの142キロには遠く及ばないが、運河のギャングとしての貫禄は十分。宿に帰れば修羅場が待っているのも忘れ、主人の顔は満足げに輝いていた。