パンタナールはブラジル、ボリビア、パラグアイに跨る23万平方キロメートルの世界最大の湿原である。約80種の野生動物、約630種の野鳥、約240種の淡水魚など、その動植物の種類の豊富さはアマゾンも凌ぎ、まさしく自然のパラダイスだ。
パンタナールには2つの顔がある。11〜5月までの雨季と6〜10月までの乾期だ。雨季には水位が2メートルほど上昇し、大地のほとんどが水浸しとなる。そして乾期になると、何事もなかったかのように広大な牧場が現れる。
そんなパンタナールに「黄金の河の虎」ドラードを求めて日本を後にした。成田からロサンゼルスまで9時間。ロサンゼルスからサン・パウロまで12時間。ヴァリグブラジル航空の快適な座席に身を沈め、うたた寝と読書と酒盛りを繰り返し、ふと気が付くと飛行機は徐々に高度を落としていた。
サンパウロで入国検査を済ませ、パンタナール湿原の南の玄関口カンポ・グランジまで約3時間のフライト。カンポ・グランジはマットグロッソ州の州都で鉱物発掘の基地として栄えた町だ。
飛行場で今回の旅に誘ってくれたグランデ小川さんと合流する。アマゾンの巨大魚を追い求めて20年以上、「南アメリカのフィッシングに関して俺より詳しい日本人はいない!」と豪語する小川さんは釣りと酒とボニータをこよなく愛する47歳。フィッシング・ガイド、エコツアーのコーディネーター、アマゾン自然学校の校長など様々な顔を持つが、専門は古生物学でアマゾンの野生に関する知識は特筆もの。
カンポ・グランジからアキダウアナまで2時間車を飛ばし、昼食にサトウキビを原料とした地酒ビンガに潰したライムと砂糖を加えたカイピリーニャをグイッとあおってセスナに乗り込む。赤茶けた飛行場を後にすると、眼下には広大な草原と原生林が互いの勢力を競い合うかのように広がり、茶褐色のリオネグロが我が物顔で蛇行しながら流れる。そして至る所に小さな湖が顔を覗かせ、岸辺には放牧された牛が散らばっている。
約1時間後。セスナは今回のベースとなるヘカント・バハ・マンサの草原に降り立つ。
ヘカント・バハ・マンサはフィッシングとエコツアーのベースとなる牧歌的なロッジで、支配人はプロのミュージシャンであり、フライフィッシャーマンでもある。午後3時。移動に次ぐ移動で時差ボケ状態だが、アングラーの悲しい宿命か、とりあえずフライをキャストしなくちゃ落ち着かない。そこで、自己紹介もそこそこにタックルを抱えてリオネグロの岸辺に向かう……
協力/ヴァリグブラジル航空・ツニブラトラベル